新しい年になりましたが、昨年も生成AIが至るところで話題となった年でした。
年末に、ある著名な大学教授とお会いした際に、「学生はみなChatGPTでレポートを作成してくる。そして実に立派なものが多い。身近に賢いAIがある現実に教育現場はどう向かい合えばいいのか、我々は真剣に考えなくてはいけないときにきている」と真顔でお話をされていました。生成AIが、検索やマップと同様な身近なツールとして使われるようになったことを実感した瞬間でした。
話は変わりますが、昨年の春頃だったでしょうか。当時のChatGPTに自分について訪ねたところ、「森英悟氏は前衛芸術家」だと教えてくれたことがあります。ChatGPTの基盤は大量のWebテキストなどから単語の出現確率を導き出すLLM(Large Language Model)であり、LLMは知識を体系化したデータベースではありません。なので、十分に著名な、例えば大谷翔平さんについて尋ねればほぼ真実を答えてくれたのですが、わたしの名前では「知識的には」ほぼランダムな、「言語のつながりとしては」実に正しい嘘情報が出力されたのです。いわゆるハルシネーション(Hallucination:幻覚)と呼ばれる現象です。
で、最新のChatGPT4oに森英悟さんについてあらためて聞いてみました。
森英悟(もり えいご)氏は、東京を拠点に活動するAIスタートアップ「株式会社Sigfoss」の代表取締役社長です。北海道大学大学院で自然言語処理の研究に従事し、博士(工学)の学位を取得後、日本IBMに入社し、SAP認定テクニカルコンサルタントとしてERPシステムの設計・構築に携わりました。その後、ノキアジャパンに転じ、次世代端末のOSやユーザーインターフェースの研究開発を担当し、フィンランドのノキア本社ではスマートフォン端末のマルチメディア機能開発を統括しました。帰国後は、ユニデン技術本部長や代表取締役社長を歴任し、2014年に株式会社Sigfossを創立しました。
森氏のリーダーシップの下、Sigfossは世界トップレベルのAI開発プロジェクトを手がけるAIソリューションカンパニーとして成長を続けています。
なんということでしょう。わたしは大谷翔平さん並の著名人となったようです!
なんてことはもちろんなくて、最新のChatGPTは、ネット検索を行い、検索結果を組み合わせて回答を作るようです。(ちゃんと出典も示されます)
もちろんLLMがそのようなことができるように賢くなったという意味ではありません。ChatGPTというシステムがそのように構成されるようになったということでしょう。一般に、ハルシネーションに対する対応策として、外部情報を参照するRAG(Retrieval-Augmented Generation)という仕組みが考案され、使われています。詳しい仕様は非公開なので想像ではありますが、最新のChatGPTはネット検索を使ったRAGを装備しているというところなのかと思います。
少し趣向を変えてみましょう。近年、男女の出会いはマッチングアプリによるものが主流だとあちことで耳にします。そしてマッチングアプリで良い出会いを得るためにはまずは「良いプロフィール」を作る必要があるとか。早速ChatGPTにプロフィール作成をお願いしてみました。
森英悟さんのような実績のある方がマッチングアプリに登録する場合、プロフィールには以下のポイントを含めると良い印象を与えつつ、自然で魅力的な内容になります。
趣味・関心: 読書、ランニング、旅行、新しいテクノロジーを試すこと
こんにちは!英悟といいます。現在、AIスタートアップの経営をしています。仕事では、未来の可能性を広げるような技術開発に情熱を注いでいますが、プライベートでは心地よいリラックスや新しい発見を楽しむのが好きです。普段は忙しいですが、週末にはランニングでリフレッシュしたり、気になったカフェを巡るのが楽しみです。旅行にも目がなく、これまでに訪れた中ではフィンランドが特に印象に残っています。パートナーと一緒に、笑顔の絶えない関係を築いていきたいと思っています。思いやりを大切にし、お互いに成長できる関係を目指しています。
一緒に楽しい時間を過ごしながら、新しいことにチャレンジするのが好きな方。一緒においしい食事を楽しんだり、週末の小旅行を楽しんだりできるパートナーを探しています。
1. プロフェッショナルな印象: スーツ姿やオフィスでの自然な写真を1枚。
2. リラックスした雰囲気: 趣味や旅行中のカジュアルな写真。
このようなプロフィールは、森英悟さんの魅力的な人柄や経歴を伝えつつ、親しみやすさも感じさせる内容です。
経験がないわたしにはこれが良いプロフィールなのかはわかりませんが、いかにもそれっぽいプロフィールを作ってくれました。私に関して検索して出てくる内容ではありませんので、強力な生成力は健在ですし、ポジティブに盛ってくれてる感があります。当初LLMは、倫理的に問題のある文章を作ることが問題になりました。これに対する対処として、回答に対する人間のスコアリングに基づいてモデルを強化学習するRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)という手法が使われています。あるいは基本的にポジティブな回答を作るようにチューニングされているのかもしれません。
さて、こうして「進化」を続けるAIですが、若い世代を中心にますます生活の中に受けられていくことは間違いないでしょう。人間とテクノロジーの関係とはそういうものだからです。人は生まれたときからそこにあるものに疑問は抱かない。AIネイティブ世代の誕生です。
「仕事」はどうなのでしょう。大量の計算リソースを必要とする、大規模なLLMや生成AIを開発できる企業はほんのひと握りです。我々のようなテクノロジーソリューションを提供する会社が、自分たちの立ち位置と価値が維持できるのでしょうか。さらには巷で言われるように、多くの仕事がChatGPTにとって変わられてしまうのでしょうか。
私はその答えに到達しているわけではないのですが、大きな変化がくることを悲観してもいません。もう少し変わらず平穏にいてくれと願うよりは、どうせ不可避の変化が社会にあるなら、生きているうちに体験したいですからね。
さて、今年はどんな年になるでしょうか。